水素ガスを扱う水素吸入器に爆発の危険性はないのか・・?
この問題を提起するひとつのプレスリリース(報道発表)がありました。
2019年9月25日に発表された「MiZ株式会社と慶應義塾大学の共同研究の成果として、ひとつの論文が科学誌に掲載された」というプレスリリースです。
それによると、MiZ社が「世界唯一の爆発しない水素ガス吸入機を開発した」とあります。
・・ということはMiZ社の水素吸入器以外は爆発する危険があるってこと?
どうなんだろうね・・!
今回はこの報道発表の意味について、本当にほとんどの水素吸入器に爆発の危険性があるといえるのか?
またMiZ社の水素吸入器がどんなものなのかについて調べてみました。
水素吸入器の安全性・危険性について気になっている方は参考にしてみてください。
この記事は2019年のプレスリリースに対する記事です。
水素吸入器の爆発リスクについての最新の検証記事は、以下のリンクをクリックしてください。
ほとんどの水素ガス吸入器は危険?MiZ社の主張
MiZ社によるプレスリリースはかなり刺激的というか、競合他社にケンカをうってるようにも取れてしまうのですが・・^^;
その理由としてプレスリリース内に掲載された以下の表があります。
この表を見る際のポイントは3つあります。
❶ 従来、水素ガスは空気中の濃度が「4〜75%の範囲」にある状態で燃える・または爆発するリスクがあるとされてきた→独自の研究により「10%以下であればリスクはないとわかった」としている
❷ 多くの水素吸入器では水素ガス濃度が66%または99%ほどあり、爆発の危険がある
❸ MiZ社の水素吸入器(MHG-2000α)だけは、水素ガス濃度を10%以下の「6.6%程度」におさえているので安全
とこのように、
「MiZ社以外の水素吸入器は爆発の危険あり」
「MiZ社の機械が唯一の爆発リスクがない水素吸入器だ」
と主張しているわけですね。
これはたしかにケンカを売ってると言ってもおかしくないわね・・
水素ガス吸入療法に使用されている水素吸入器も危険?
この表の「リスクがある水素吸入器」の中には、熊本県の玉名地域保健医療センターでがん治療の臨床試験に使われ(「臨床的有効率が75.7%と非常に良好」という結果)、現在もがん治療に使われているヘリックスジャパン社の「ハイセルベーター」も含まれています。
(参考:水素吸入療法【全がん種】研究部会|日本先進医療臨床研究会)
これにはちょっとびっくりしていまいました。
あの「ハイセルベーター」までダメ出しされてるんだね・・!
広く医療目的にも使用されている水素吸入器も「爆発の可能性がある」とダメ出しされているわけですが、
本当にMiZ社の機器だけが爆発しないといえるのでしょうか?
この表とプレスリリースについて、私なりに読み解いてみたいと思います。
私は科学や機械の専門家ではないので間違っていたらごめんなさい!(ご指摘お待ちしています)
今現在の私の知識にもとづいて、このプレスリリースを読み解いてみたいと思います。
水素ガス濃度の違い(6.6%・66%・99%)の意味
まず表のなかにざっと3種類ある水素濃度「6.6%・66%・99%」の違いについてみてみましょう。
水素ガス濃度「66%」と「99%」の違い
まず、発生時の水素ガス濃度に「66%」または「約99%」という違いがあるのは、発生方式として「酸素と水素の混合ガスを発生」「水素のみ発生」という2種類があるからです。
- 酸素と水素の混合ガス発生タイプ→水素:酸素=2:1→水素約66%
- 水素のみ発生タイプ→水素約99%
というわけですね。
この2種類はどちらが優れているとかは基本的にないと思います。(どちらが優れているといった科学的な検証はまだなされていないはずです)
MiZ社の水素吸入器は「送風機」をつかって強制的に水素濃度を下げ、危険を回避する
ではMiZ社の水素吸入器はどこが違うかというと、
「空気を吹き付けることで強制的に水素濃度を薄くしている」
という点です。
▼MiZ社の水素吸入器のイメージはこんな感じ(あくまでイメージ画像です)。
このように、66%または99%濃度の水素ガスが「燃えるリスクがある時間」を可能な限り少なくすることで、「燃焼・爆発のリスクをなくす」というのがMiZ社の機器の考え方だと思います。
そしてMiZ社の機器は「ガス発生直後に空気を吹きつけて10%以下にする」ことから、上の表のように、
- MiZ社のMHG2000α:6.6%
- 他社製品:66%または99%
という大きな差のある表記が生まれていると考えられます。
一般の水素吸入器は爆発の危険性がある?
以上のような違いから、
「MiZ社の水素吸入器が世界唯一の爆発しない水素吸入器だ」
と主張されているわけですね。
このMiZ社の主張にたいして他の会社がどのように対応していくのか興味深く見守りたいと思っていますが・・・・ほんとうに他の機器だと爆発のリスクがあるのでしょうか?
燃焼に必要な「着火のきっかけ」
水素吸入器内で水素ガスが発生してから、実際に吸入されるまでのあいだ、たしかに燃焼リスクのある、
「空気中の水素ガス濃度が4%〜75% (今回のMiZ社の資料によると10%〜75%)」
という状態は、たとえほんの短い時間であってもあるはずです。
この状態から燃焼が起こるためには、なんらかの「着火のきっかけ」が必要になると思うのですが、MiZ社によるプレスリリースによると、
ライターの炎または静電気を H2 ガス吸入機の出口に近づけることで、爆発が発生するかどうかを調べた。
(引用元:プレスリリース「世界唯一の爆発しない水素ガス吸入機の開発」)
その結果、これら3つの製品で大きな爆発(デトネーション)が認められた(データ未掲載)。
ということで、吸入器の出口に「ライターの炎」または「静電気」を近づけた、とあります。
この2つが「着火のきっかけ」ですね。
できれば「吸入器の出口」がどこを意味してるのかなど、詳しい資料があるとありがたかったのですが、残念ながらこの爆発事例については「データ未掲載」となっています。
とはいえ、
- 「10%〜75%の水素ガス濃度」の状態の場所があり、
- さらにそこに炎や静電気といった着火の原因があれば、
→燃焼・爆発の可能性がある
というのは理論として納得できます。
私が使っている水素吸入器「H2ヒーラー」に爆発の危険性はあるか?
内部構造を詳しく知らない製品のことはうかつに言えないため、これまで1年半ほぼ毎日使っている水素吸入器「H2ヒーラー」で考えてみたいと思います。(H2ヒーラーは現在生産が終了しています)
まずH2ヒーラーの発生ガスは「水素:酸素(2:1)の混合ガス」となっており、水素濃度は約66%です。
H2ヒーラーの場合は水の中でガスが発生するので、この時点では燃焼の心配はありません。
▼そしてボトル内の空気と混ざり始めるのがここ。
▼そしてカニューラ(チューブ)の先の吸入口では4%以下にまで水素ガス濃度は下がっています。
実際にカニューラの先の水素ガス濃度を実測した動画がこちら。たしかに3.8%程度の濃度が計測されています。
水素ガス濃度10%〜75%の場所で発火がありえるか?
H2ヒーラーの機器内で【水素ガス濃度が「10%〜75%」になる場所】は、ほんのわずかかもしれませんが存在すると思います。
ただ、もしそれがあるとしたらこの場所なんですよね。
この場所で「ライターの炎」や「静電気」があるかというと・・
ライターの炎→まずありえない
静電気
→静電気の発生条件のひとつに湿度が低いことがあげられる
→水面の上のこの小さな空間の湿度は相当高いはず
→可能性は極めて低いのでは?
ということで、可能性は極めてゼロに近いのではないかと思います。
科学に関しては素人の考えなので間違っているかもしれませんが、どうでしょう?
これまで1年半H2ヒーラーを使ってきたなかで、燃焼や爆発のリスクのようなものを一度も感じたことがないというのもありますが、
個人的には、
MiZ社の機器が”世界唯一の爆発しない水素吸入器だ”というのはいいすぎではないかな・・?
と思っています。
(実際、今回のプレスリリースでもすべての水素吸入器を試したわけではないですし・・)
ハイセルベーターET-100は東京消防庁と安全性を確認済み
またもうひとつ、「MiZ社の水素吸入器が唯一の安全な水素吸入器とはいえない」ことをしめす情報があります。
MiZ社が「爆発の危険あり」と批判しているヘリックスジャパン社のハイセルベーターET-100について、同社が東京消防庁と協力して「極小空間で使用した場合の安全性」を確認した実験があるんですね。
>>火災予防条例第23条の裸火使用時等に関する安全性評価実験
これによると、人為的につくった極小空間内で水素ガス発生量1200ml/分のハイセルベーターET-100を作動させても、空間内の水素濃度は危険レベルには達しないことが確認されています。
この実験からも、MiZ社の主張には少々無理があるような印象を受けています。
MiZ社の水素吸入器「Jobs-α」について
ではここでリスクについての話はいったん切り上げ、MiZ社の水素吸入器「Jobs-α」について確認してみましょう。(MHG−2000αは現在販売されていないようで、Job-αがMiz社の最新機種のようです。)
Jobs-α | |
---|---|
価格(税込) | 748,000円(税込) |
水素ガス濃度※ | 5%※ |
水素ガス発生量/分 | 200ml/分 |
吸入時間 | 連続使用10時間 |
水素水はつくれる? | 不可 |
使用できる水 | 精製水 |
メンテナンス | 水素生成用の精製水補充 冷却用水補充 |
サイズ | 幅254 × 奥行き224 × 高さ278mm |
重さ | 約3.0kg |
この機種も、先ほどご紹介した「空気を吹きつけて強制的に水素ガス濃度を下げる機能」がついてます。
まとめ
以上、今回はMiZ社が問題提起した、「水素吸入機に爆発の危険性はあるのか?」という問題について、私の現時点での理解にもとづいてご紹介しました。
「MiZ社の製品の安全性が高い」のは間違いないといえますが、「MiZ社以外の製品には爆発リスクがある」という点については「そうとも限らないのでは・・?」というのが現時点での感想です。
何より水素分子は非常に拡散しやすいので、よほど特殊な環境下でないかぎり、「4〜75%濃度」というリスク濃度がキープされることはないのでは?と感じます。
まあこれは科学素人の感想なのでなんの保証にもなりませんが・・。
もしかするとMiZ社以外のメーカーが、今回のプレスリリースに反論してくるようなこともこの先あるかもしれません。
そういう動きにも注意して見守っていきたいと思います。