2016年12月に先進医療Bに認可されすすめられてきた、東京歯科大学と慶應義塾大学の研究グループによる「心停止後症候群への水素ガス吸入療法」の成果についての発表(プレスリリース)が2023年3月22日にありました。
それによると、
- 90日後の生存率:61%→85%に上昇
- 後遺症なしに回復した人の割合:21%→46%に上昇
ということで、確かな可能性が示されたようです。
この発表についてはNHKのニュースでも取り上げられており、大きな注目を集めていますね。
今回はこのニュースについて簡単にご紹介してみたいと思います。
これをきっかけに、水素吸入の認知が広まるといいなと思っています。
「心停止後症候群」への水素ガス吸入療法とは
心臓のトラブルなどで心停止が発生した際、救急蘇生によって心臓の拍動が戻ることがあります。
すると血液の循環が再開されますが、止まっていた状態からいきなり臓器に血液と酸素が供給されることで、大きなダメージが生じることがあります。
これが「心停止後症候群」です。
結果として、脳への損傷により意識が回復できなくなるか、もしくは重度の神経学的後遺症が残ることがあります。
動物実験での効果を人間でも確認するための臨床試験が行われた
東京歯科大学の鈴木昌教授らの研究チームでは、動物実験によって「心停止後の水素ガス吸入により死亡率が下がり、脳への傷害も軽減する」ことを報告していましたが、人間にたいする効果は不明でした。
そこで人間を対象に、死亡率や後遺症が残るかどうかを調べる臨床試験が行われていたわけですね。
この水素ガス吸入療法が、2016年12月に厚生労働省の先進医療Bに認可されたという流れがありました。
2%水素吸入によって死亡率が低下
今回の臨床試験では、対象患者にたいし水素ガス2%を加えた「水素群」と、加えない「対照群」を比較してその効果を検証しました。
その結果が、
- 90日後の生存率:61%→85%に上昇
- 後遺症なしに回復した人の割合:21%→46%に上昇
という今回発表された内容だったわけです。
残念な点として、
おりからの新型コロナウイルス感染症のため、救急医療はひっ迫し、やむを得ず研究は早期に終了しましたので、目標症例数には到達せずに水素吸入療法が有効か否かをはっきりと示すには至りませんでした
水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果-全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告|プレスリリース 慶應義塾大学 / 東京歯科大学
とのことですが(対象患者数は全部で73名だったとのこと)、プレスリリースは
90日後の生存率は、従来の治療で61%なのに対し、水素吸入療法により85%に上昇、また、後遺症なく回復した人の割合も21%から46%に上昇することが統計学的に確かめられました。水素は人体に害がないとされており、この臨床試験でも水素が原因と考えられるような副作用は観察されませんでした。実用化すれば多くの患者を救命できると考えられます。
と結ばれています。
統計学的にも意味のある数字だったようで、今後の展開に期待が持てそうですね。
まとめ
というわけで今回は、東京歯科大学と慶應義塾大学の研究グループが行った「心停止後症候群への水素ガス吸入療法」の成果が発表され、注目を集めている件についてご紹介しました。
NHKのニュースでは、
想像を超えるよい結果で驚いている。水素の吸入は大がかりな装置は必要なく、多くの患者が使えるよう実績を重ねていきたい。
という談話がありました。
本当にそのとおりで、水素吸入は複雑な機械や副作用の心配もなく、私たちの健康への大きな寄与が期待できる方法だと思います。
このようなニュースをきっかけに、一人でも多くの方が水素や水素吸入に興味を持っていただけたらと思います。