現在、様々な医療機関で水素ガス吸入を取り入れた療法がおこなわれており、水素吸入の医療への利用について注目が高まっています。
この記事では、様々な各医療機関で行われている「水素ガス吸入療法」について、その内容をご紹介します。
「水素ガス吸入療法」って?
参考までに2016年に厚生労働省によって先進医療Bに認定された「水素ガス吸入療法」の概要についてみてみると、以下のように記載されています。
先進医療技術名:水素ガス吸入療法
適応症:心停止後症候群
(院外における心停止後に院外又は救急外来において自己心拍が再開し、かつ、心原性心停止が推定されるものに限る。)技術の概要: 成人院外心停止後患者のうち、自己心拍再開後も昏睡が持続する患者を対象とし、集中治療室で18時間2%水素添加酸素を人工呼吸器下に吸入する。この間、ガイドラインに準拠した集中治療を行う。
(参考:先進医療の各技術の概要|厚生労働省)
難しくてよくわかりませんね・・^^;
水素ガス吸入療法をおこなっている慶應義塾大学病院のホームページに、もっとわかりやすい説明がありました。
それによると、以下のように述べられています。
・水素ガスは様々な病気や病状にたいして効果のあることが動物実験で示されてきた
・水素ガスは体内で様々な有害物質を無毒化できるのではないかと期待されている
・今回の心停止後症候群では、主に脳の機能に焦点を当てて、心停止になった時の脳の酸素不足のダメージを水素によって軽減しようとするもの
(参考:水素ガス吸入療法|慶應義塾大学病院)
つまり、一時的に心臓がとまってしまったときの「酸素不足」による脳へのダメージを、水素ガス吸入で軽減しようという治療だといえます。
一時的な心停止があった場合、脳へのダメージにより、生存率やその後の社会復帰の可能性がいちじるしく低下してしまうという現状があります。
水素ガス吸入療法には、このダメージを軽減することで、患者の生存率と社会復帰の可能性を高めることが期待されています。
使用する水素ガスは「2%濃度で18時間」
使用する水素ガス濃度については、「2%濃度の水素ガスを18時間吸入」となっています。
この「2%」という濃度がどういう濃度かというと、通常の空気中の水素ガス濃度は約0.00005%なので、通常の約4万倍の濃度ですね。
ちなみに水素ガスは空気中の濃度が約4〜75%の場合、燃焼の可能性が生じるといわれています。(参考:水素の安全利用|電気設備学会誌)
水素ガス吸入方法は、燃焼の危険性のない水素ガス濃度でおこなわれているわけです。
水素が効果をもたらす作用機序については・・「悪玉活性酸素の除去だけでは説明がつかない」
水素ガス吸入療法は、水素のどのような性質に期待されているのでしょう?
水素といえば、細胞やDNAを傷つける「ヒドロキシルラジカル」という酸化力の強い「活性酸素」を無毒化するはたらき(抗酸化)が有名です。
が、水素ガス吸入によって観察される効果は、抗酸化だけでは説明がつかないほど「良すぎる」もののようです。
慶應義塾大学の佐野元昭教授によると、
水素ガスは、悪玉活性酸素を除去する作用だけでは説明できない、実に多面的治療効果を発揮します。
ということで、水素ガス吸入療法の臨床研究だけでなく、水素ガスが治療効果を発揮するメカニズムを解明するための基礎研究の充実も必要とされているそうです。
現在までにわかっている「水素の効果」については、以下の記事も参考にしてみてください。
様々な医療機関すすめられている水素ガス吸入療法の臨床試験
上記の慶應義塾大学以外でも、さまざまな医療機関で水素ガス吸入療法の臨床試験がすすめられています。
以下にそのいくつかをご紹介します。
「肺移植後の虚血再灌流障害の治療」大阪大学医学部附属病院
肺を移植する際、血流が途絶えていたところにふたたび血液がドッと流れ始めると、そこに大量の「活性酸素」が生じます。
この活性酸素によるダメージが「虚血再灌流障害」と呼ばれ、肺移植後の機能不全の原因となっています。
大阪大学附属病院の呼吸器外科では、虚血再灌流障害による臓器へのダメージを軽減するために、「水素ガス吸入療法」をもちいた臨床試験をすすめています。
「アルツハイマー型認知症への有効性」西島病院
静岡県沼津市にある西島病院では、脳神経外科の小野博久医師のもと、水素ガス吸入療法をもちいた臨床試験が複数すすめられています。
そのひとつが「アルツハイマー型認知症」の方を対象にした、水素ガス吸入とリチウム内服併用治療の効果と安全性を調べる以下の臨床試験です。
「水素分子投与と認知症の関係」については、動物実験で「水素水による認知症発症予防効果がある」という研究があります。
「アルツハイマー型認知症の原因のひとつは酸化ストレス」(参考:水素によって認知症を予防できるか?|太田成男日本医科大学名誉教授)ともいわれており、アルツハイマー型認知症への水素吸入の効果に期待がもたれています。
「急性期脳梗塞症例の治療」西島病院
同じく西島病院でおこなわれているもう一例が「急性脳梗塞症例の治療」です。
こちらも動物実験においては、「水素ガス吸入によって脳へのダメージが大きく軽減される」という状況が観察されており、人の脳梗塞症例への効果についても期待がもたれています。
(参考:Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals.|NCBI)
「がん(全般)に対する、水素吸入器を用いた、治癒・改善の多施設共同研究」日本先進医療臨床研究会
全国97の病院・クリニックで構成される医師団体『日本先進医療臨床研究会』では、未承認の新しい治療法などを患者との同意契約のもと治療にとりいれ、治療効果の確認や症例報告の積み上げをおこなっています。
その一環として、
『がん(全般)に対する、水素吸入器を用いた、治癒・改善の多施設共同研究』
という臨床研究がすすめられています。
水素吸入をもちいたがん治療で75.7%の高い有効率
なかでも熊本県玉名市の「玉名地域保健医療センター」でおこなわれた37名のがん患者を対象にした治療では、
- 奏効率32.4%
- 臨床的有効率75.7%
と、非常にポジティブな結果がでています。
(参考:水素吸入療法【全がん種】研究部会|日本先進医療臨床研究会)
がん治療への適用はこれからもすすめられていく可能性がありそうですね。
水素ガス吸入療法を取り入れている日本全国のクリニック
ここまでみてきたような先進医療への適用、臨床試験における結果等をふまえ、「自由診療」として水素ガス吸入療法を取り入れているクリニックも増えてきています。
ここでは水素ガス吸入療法を取り入れている日本全国のクリニックについてご紹介します。
リンク先に詳しい情報がありますので、参考にしてみてください。(表は横スクロールできます)
名称 | 場所 | 公式サイトの関連ページ | 適応疾患など |
---|---|---|---|
札幌麻酔クリニック | 北海道札幌市 | 水素療法 | 慢性疲労・ストレス・生活習慣病・循環器疾患・がん・前立腺肥大・不眠・冷え性・白内障 |
皿沼クリニック | 東京都足立区 | 水素吸入療法 | 生活習慣病・不眠・冷え性・花粉症・白内障・アトピー・疲れ・ストレスなど |
辻クリニック | 東京都千代田区 | 水素治療 | 疲労回復・糖尿病・動脈硬化・脳卒中・脳梗塞・心筋梗塞・メタボリック症候群など |
青山からだのクリニック | 東京都港区 | 水素療法 | 疲労回復・糖尿病・脳卒中・心筋梗塞・アトピー性皮膚炎など |
星子クリニック | 東京都港区 | 水素吸入・水素点滴 | エイジングケア・病気予防・疲労回復・美容 |
医療法人きむら内科クリニック | 神奈川県川崎市 | 水素療法外来 | 脳・筋肉・気管支・肺などの症状にたいする補助的治療 |
飛鳥メディカルクリニック | 三重県津市 | 水素ガス吸入療法 | |
みうらクリニック | 大阪市北区 | 水素吸入 | がん治療 |
よろずクリニック | 鳥取県鳥取市 | 水素吸入療法 | がん治療 |
桑島内科医院 | 香川県東かがわ市 | 水素吸入 | 老化・動脈硬化・心筋梗塞・疲労・肩こり |
水素吸入に効果が期待できる疾患は?
上のクリニック一覧を見てみるとわかるとおり、各クリニックは「水素ガス吸入療法」に効果が期待できる適応疾患として、以下のようなものをあげています。
- 慢性疲労
- ストレス
- 生活習慣病
- 循環器疾患
- がん
- 動脈硬化
- 心筋梗塞
- アトピー性皮膚炎
- 白内障
- 病気予防
- 美容
どれもまだ研究中であったり、動物実験の段階だったりと、間違いなく効果が確定しているものではありません。
が、水素吸引を含め「水素をとりこむこと」には副作用がないことから、積極的にすすめられている部分があるのだと思います。
まとめ
以上、この記事では
- 水素吸入をもちいてすすめられている臨床試験
- 水素吸入療法が受けられる一般のクリニック
についてご紹介しました。
臨床試験として進められている水素ガス吸入療法は「無作為」「二重盲検」といった条件があるため、こちらが希望してもやってもらえない可能性があります。
「水素ガス吸入療法を受けたい」という場合は、後半にご紹介した一般のクリニックから検討されるとよいでしょう。
また、自宅で毎日のように水素吸引ができる家庭用の水素吸引器の人気も高まっています。
これについては「どのように選べばいいのかわからない・・」という方の参考になる記事もありますので、よかったら見てみてくださいね。