水素のはたらきは、「アンチエイジング(抗老化)」とからめて語られることも多いですよね。
では具体的に水素分子のどのようなはたらきがアンチエイジングと関連しているのでしょうか?
この点について説明する、
「分子状水素の抗加齢効果に関するこれまでの研究」
を総合的に分析した【レビュー論文】が、中国の研究チームによって発表されています。
今回はこの論文を紹介しながら、水素分子が私たちの健康と長寿にもたらす可能性について、見ていきたいと思います。
これまでスイスピによせられた水素製品の体験談や、多くの水素製品のレビュー等をみても「老化にたいする効果」を実感されている声は少なくないと感じています。
今回ご紹介する論文はその裏付けを与えてくれるかもしれません。
◆研究論文
>>『Role of Molecular Hydrogen in Ageing and Ageing-Related Diseases|老化と老化関連疾患における分子状水素の役割』
(Fu, Zhang, and Zhang が2022年に学術誌『Oxidative Medicine and Cellular Longevity』に発表した論文)
老化とは?そのとき私たちのからだの中で何が起こっているのか?
この論文では、まず老化とその特徴、それがもたらす影響について定義しています。
老化とは、
- 生体機能が徐々に低下していく生理学的プロセス
- 避けられないが、その速度には個人差がある
であり、これまでの数十年にわたる研究により以下のような9つの特徴が明らかになっています。
- 遺伝子の不安定化
- テロメア(染色体の末端部分にある構造で細胞分裂のたびに短くなり、その限度を超えると細胞老化が始まるトリガーとなる)の短縮
- エピジェネティックな変化(遺伝子そのものは変化がなくても、その「読み取り方」に変化が生じる)
- タンパク質の恒常性の喪失(細胞内のタンパク質の質と量のバランスが崩れる)
- 栄養感知の機能不全
- ミトコンドリア(生体のエネルギー生産工場)の機能障害
- 細胞の老化(→体内組織の機能低下)
- 幹細胞(新しい⽪膚や⾎液細胞、⾻などを作り、組織を新陳代謝させたりする細胞)の枯渇
- 細胞間コミュニケーションの変化(細胞同士の情報伝達が乱れる)
ふつうに「老化」というけど、からだのなかではこんなことが起きてるのね。
論文のなかでは、これらの老化の特徴にたいして水素がもつはたらきが説明されていくよ。
水素分子の抗酸化作用
水素分子が老化プロセスに影響を与える主な機序の一つが、その強力な抗酸化作用です。
この論文では、水素分子の抗酸化作用について詳しく解説されています。
水素分子の抗酸化作用には「直接的」なものと「間接的」なもの、2つの種類があるみたいですね。
① 直接的な抗酸化作用
水素分子は、DNAや細胞膜、タンパク質を傷つけ老化を促進する原因となる、最も有害な活性酸素「ヒドロキシルラジカル」「ペルオキシ亜硝酸」と直接反応し、無害化します。
「有害な活性酸素を無害化する」っていうのは、一番よく聞く水素のはたらきだね。
② 間接的な抗酸化作用
水素分子は、体内に元々そなわっている様々な抗酸化システムを活性化します。
具体的には以下の3つのプロセスがあります。
❶ Nrf2経路の活性化
Nrf2とは酸化ストレスに対応するときに活性化するタンパク質で、Nrf2が活性化することにより体内の多くの抗酸化酵素の発現が促進されます。
結果として細胞全体の抗酸化能力が向上し、酸化ストレスへの耐性が高まります。
❷ HO-1(ヘムオキシゲナーゼ-1)の発現促進
HO-1はヘムを分解する酵素で、この過程で
- ビリベルジン【さらに強力な抗酸化物質であるビリルビンに変換される】
- 一酸化炭素(CO)【抗炎症作用をもつ】
- 鉄イオン
を生成します。
水素分子によってHO-1の発現が促進されると、上記の生成物を通じて細胞保護効果を発揮され、酸化ストレスや炎症から細胞を守ります。
❸ カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンなどの抗酸化物質の産生促進
体内に元々ある各種の抗酸化物質の産生を水素分子が促進します。
水素の優れた点は、直接的な抗酸化作用だけでなく、このように(体内の酵素発現に関係するなどして)間接的にも抗酸化力を高める点だと思います。
水素分子の抗炎症作用
水素分子の老化抑制効果において、抗酸化作用に次いで重要なのが抗炎症作用です。
というのも「慢性炎症」が多くの加齢関連疾患の要因となっていて、老化プロセスを加速させる主な原因の一つとなっているんですよね。
高齢者の体は、低レベルではありますが慢性的な炎症が持続した状態です。この状態は、自己免疫疾患である関節リウマチやアレルギー、がんの発症、ワクチン効率の低下などにも密接に関係していると考えられています。
免疫系の老化|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
炎症には【急性炎症】と【慢性炎症】があります。
急性炎症は体を守るための重要な反応ですが、慢性的な炎症は様々な健康問題を引き起こす可能性があります。
水素分子は、この有害な慢性炎症を抑える効果があるのです。
水素分子の抗炎症メカニズム
水素分子は以下のような方法で抗炎症作用を発揮します。
- 炎症を促進する「NF-κB」の抑制:NF-κBは炎症反応を促進する主要な転写因子(タンパク質の複合体)です。水素分子はこの活性化を抑制します。
- 炎症性サイトカインの産生抑制:TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症を引き起こすタンパク質の産生を減少させます。
- 抗炎症性サイトカインの産生促進:IL-10などの抗炎症作用を持つタンパク質の産生を増加させます。
- 好中球の活性化抑制:過剰な炎症反応を引き起こす好中球の活性化を抑制します。
慢性炎症と老化関連疾患の関係
慢性炎症は多くの老化関連疾患と密接に関連しています。
例えば、
- 心血管疾患
- 糖尿病
- 神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)
- がん
- 関節リウマチ
などですね。
多くの研究論文により、水素を摂取することで、これらの疾患のリスクが下がる可能性が示唆されています。
次のセクションでは、水素分子が老化に影響を与える「その他の作用」について見ていきましょう。
水素分子のその他の作用
水素分子の老化抑制効果は、抗酸化作用と抗炎症作用だけにとどまりません。
最新の研究では、水素分子が細胞内の様々なプロセスに影響を与え、老化を抑制する可能性が示されています。
ここでは、特に重要な3つの作用について詳しく見てみましょう。
① mTORシステムの調節
mTOR(mammalian Target of Rapamycin)は、細胞の成長、代謝、寿命を制御する重要なタンパク質です。mTORの過剰な活性化は、細胞の老化を促進することが知られています。
水素分子には、このmTORシステムを適切に調節する働きがあることがわかっています。
② オートファジーの促進
オートファジーとは、細胞が自身の中の不要なタンパク質や損傷した細胞小器官を分解・再利用するプロセスのことです。
このプロセスは、細胞の健康維持と若さを保つ上で非常に重要です。
水素分子はこのオートファジーのプロセスを促進する働きがあり、それにより神経変性疾患やがんなどの年齢関連疾患のリスク低減につながる可能性があることがわかっています。
③ ミトコンドリア機能の改善
ミトコンドリアは細胞のエネルギー生産工場であり、その機能低下は老化の主要な要因の一つです。
水素分子は、ミトコンドリアの機能を以下のように改善します。
- ミトコンドリアのDNA損傷を減少させる
- エネルギー生産効率を向上させる
- ミトコンドリアの新生(ミトコンドリア生合成)を促進
これらの効果により細胞のエネルギー代謝が改善され、結果として細胞の若さと活力が維持される可能性があります。
へー、水素にはこんなにも様々な作用があるんだね・・!
水素分子はこのように細胞内の様々なプロセスに多面的に作用することで、総合的に抗老化効果を発揮する可能性があると考えられているんですね。
水素分子と老化関連疾患
これまで見てきたように、水素分子には抗酸化作用や抗炎症作用、細胞内プロセスの調節など、様々な効果があります。
これらの効果は、多くの老化関連疾患の予防や症状緩和に役立つ可能性があります。
ここでは、これまでの研究からその可能性が示唆されている、主な老化関連疾患と水素分子の効果について見ていきましょう。
① 神経変性疾患
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、加齢とともにリスクが高まります。水素分子は以下のような働きをとおして、神経変性疾患への効果が期待されています。
- 酸化ストレスによる神経細胞の損傷を軽減
- 神経炎症を抑制
- ミトコンドリア機能を改善し、神経細胞のエネルギー代謝を向上
② 心血管疾患
動脈硬化や高血圧など、心血管系の疾患も年齢とともに増加します。
水素分子は、
- 血管内皮細胞の機能を改善
- 酸化LDLコレステロールの生成を抑制
- 血管の炎症を軽減
これらの効果により、心血管疾患のリスクを低減する可能性があります。
③ 肺疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患も、加齢とともに増加します。
水素分子には、
- 肺の炎症を抑制
- 酸化ストレスによる肺組織の損傷を軽減
- 肺機能の低下を遅らせる可能性
以上のような働きがあります。
これらの働きにより、水素分子は加齢に伴う肺機能の低下をやわらげ、呼吸器系の健康維持に貢献する可能性があります。
④ 糖尿病
2型糖尿病は、年齢とともにリスクが高まる代表的な疾患です。
水素分子は:
- インスリン感受性を改善
- 膵臓β細胞の機能を保護
- 糖尿病による合併症(網膜症、腎症など)のリスクを軽減
これらの効果から、水素分子は2型糖尿病の予防や管理において有望な役割を果たす可能性があります。
⑤ がん
がんは年齢とともにリスクが上昇する代表的な疾患群です。
水素分子には、
- DNA損傷を軽減し、がん化のリスクを低下
- 既存のがん細胞の増殖を抑制する可能性
- がん治療の副作用(放射線療法や化学療法による)を軽減
これらの効果が主に動物実験や細胞実験で確認されており、ヒトでの詳細な研究はまだ進行中です。
水素分子が単独でこれらの疾患を予防・治療できるわけではありませんが、健康的な生活習慣の一部として水素を取り入れることで、老化関連疾患のリスクを低減できる可能性があります。
まとめ|老化にたいする水素分子の可能性
以上、今回は中国の研究チームによる
「分子状水素の抗加齢効果に関するこれまでの研究」
を総合的に分析した【レビュー論文】の内容をご紹介してみました。
論文の中でも触れられていますが、今回ご紹介した水素分子の効果に関する研究の多くは動物実験や細胞実験段階であり、ヒトでの詳細な研究はまだ進行中です。
また、水素が効果をもたらす具体的なメカニズムや、
じゃあどれくらいどんな方法で水素を体内に取り入れたら具体的にどんな効果につながるの?
といった点についても、まだはっきりしていないことがたくさんあります。
水素の働きは今回見たように広範囲に及び、また効果の現れもそれぞれの人の状態にも左右される部分が多きいはずなので、なかなか一概に「こういう量をこういう方法でとればこういう効果がある」とは言いにくいのではないかと個人的には考えています。
とはいえ、冒頭で触れたとおり多くの水素製品の口コミで「若さを保つ・老化にたいする効果」が報告されているのも事実ですし、私自身2015年以降水素を摂り続けていますが「少なくとも10歳は若く見られる」という状況が続いています。
ほんとに〜?
ほんとです・・!
やはり水素には大きな可能性があると思いますので、今後の研究により水素分子の抗加齢効果についてさらなる知見が得られることを期待したいですね。
参考
◆老化を止めることができるのか?Aging HallmarksとNMNの関連性
https://life-is-long.com/article/6274
◆研究論文
>>『Role of Molecular Hydrogen in Ageing and Ageing-Related Diseases|老化と老化関連疾患における分子状水素の役割』
(Fu, Zhang, and Zhang が2022年に学術誌『Oxidative Medicine and Cellular Longevity』に発表した論文)