『フッ素系イオン交換膜』を使った水素吸入器は危険なのか?|水素吸入器の選び方

この記事を書いた人
スイスピ管理人 KON(一般財団法人日本分子状水素普及促進協会個人会員/一般社団法人水素健康推進協会認定 水素健康インストラクター )
子供のころから敏感体質・虚弱体質に苦しんできたのですが、水素と出会ったのをきっかけにして体質がかわり、毎日をフルに活動できるようになりました。
そこから水素の医学研究や様々な製品にも興味を持つようになり、一般社団法人水素健康推進協会認定講師『水素健康インストラクター』の資格をとるまでになってしまいました。
当サイト「スイスピ」では私の個人的な体験や主観をもとに記事を作成しており、広告リンクを含む製品の紹介も行っています。

先日こちらの記事でご紹介した、和久医師の著書『地上最強の水素健康法』のなかに、

水素吸入器の中には、『フッ素系ポリマー』で加工した『工業用イオン交換膜』を使った水素吸入器が存在し、フッ素化合物漏出のリスクがある

という内容の指摘がありました。

また、別のあるサイトでも(多少ニュアンスは異なるものの)「工業用水素吸入器は危険」といった主張がなされています。

こうした情報を目にすると、「工業用」「フッ素系」という言葉が独り歩きし、必要以上に不安をあおる可能性もあると感じます。

また「フッ素」と聞くと、PFASの問題PFAS規制との関係が気になる方もいるのではないでしょうか?

そこで今回はこのテーマについて詳しく調査し、以下の4つのポイントを明確にしてみました。

  • フッ素系イオン交換膜を使った水素吸入器とは?
  • それらは本当に危険なのか?
  • 「工業用」とは何を指すのか? 家庭用・医療用との違いは?
  • PFAS規制と水素吸入器への影響は?

管理人KON

水素吸入器の安全性について気になっている方、「工業用」というワードに不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

「工業用水素吸入器が危険」という噂については、こちらの記事も参考になります。

もくじ

和久医師の著書での指摘

それではまず、和久医師の著書『最強の水素健康法』の記載について確認してみましょう。

内容としては、

  • 水素吸入器の中には、フッ素系ポリマーで加工された『工業用イオン交換膜』を使用した水素吸入器がある
     
  • この種の機器には、フッ素化合物が漏出するリスクがあり、危険

・・という指摘がされています。

和久医師によると、この話は和久医師が耳にされた知人の方の話(ある水素吸入器を使用後に体調を崩し、その水素吸入器を調査したところ、「フッ素系イオン交換膜」が使われていた)にもとづくそうです。>>詳しくはこちら

フッ素系ポリマーで加工された『工業用イオン交換膜』を使用した水素吸入器」とは?

この話の真偽はまずは置いておいて、まず気になるのは

 

フッ素系ポリマーで加工された『工業用イオン交換膜』を使用した水素吸入器」って何?

どうやって見分けるの?

だと思います。

そこでこの点について調べてみると、なんと現在の市販の水素吸入器のほとんどを占める「PEM式電気分解」のタイプが、ほぼ該当することがわかりました。

現在のPEMのほぼ業界標準となっているのは、フッ素系高分子膜の「Nafion」である。

引用元:日経クロステック
PEM式とは?

PEM式とは水の電気分解によって水素を発生させる方式のひとつで、PEM(Polymer Electrolyte Membrane=固体高分子膜/イオン交換膜)を使った還元反応で水素を発生させます。

特徴として

  • 生成される水素の純度が非常に高い
  • 装置がコンパクトで済む

という点があり、多くの水素吸入器でPEM式が使われています。

YUIさん

PEM式の電気分解に使用されるイオン交換膜は、「フッ素系」の高分子膜「Nafion」(ナフィオン)が業界標準なのね。

「非フッ素系」のイオン交換膜を使った水素吸入器はある?

一方で、「じゃあ『非フッ素系』のイオン交換膜はあるのか?」についても調べてみたところ、あるにはあるものの、

非フッ素系のイオン交換膜は比較的新しい技術で、現在開発中(東レなど

であり、市販の水素吸入器に使用される段階ではないこともわかりました。

つまり、和久医師の著書の記載が正しいとすると、現在市販されているほとんどの水素吸入器(PEM式の機器)は、

フッ素系ポリマーで加工された『工業用イオン交換膜』を使用した”危険な”水素吸入器

ということになってしまいます。

フッ素系ポリマーで加工されたイオン交換膜は、本当に危険

管理人KON

そこで「フッ素系ポリマーで加工されたイオン交換膜は、本当に危険なのか?」について調べてみました。

先ほどの書籍によると、「フッ素系ポリマーで加工されたイオン交換膜」を使った水素吸入器(=PEM式の機器)は、

「使用中に『フッ素化合物が漏出』し、それを吸い込んでしまうリスクがあるので危険」

とされています。

では本当にフッ素化合物が漏出するリスクはあるのでしょうか?

フッ素系イオン交換膜は極めて安定している

この点について詳しく調べてみると、まずフッ素系イオン交換膜は、

化学的・熱的に極めて安定であり、高温や酸化環境下でも劣化しにくく、耐久性に優れいている

という性質を持っていることがわかりました。

たとえば、代表的なフッ素系イオン交換膜で水素吸入器にも使用されている「Nafion」の公式ホワイトペーパー『Water Electrolysis White Paper』には、以下のように書かれています。

Nafion膜は、機械的・化学的に安定な疎水性主鎖を持ち、極めて過酷な条件下でも性能を維持する。

Nafion膜公式ホワイトペーパー『Water Electrolysis White Paper』

ホワイトペーパーとは、企業や研究機関が特定の技術や製品について詳しく解説する公式文書のこと)

また、こちらの旭化成による資料(「フッ素電解質膜の開発動向」)では、フッ素系イオン交換膜の安定性について、

  • 構造的・化学的に極めて高い安定性を示す
  • 100℃以上の環境でも高い耐久性を示す

といった内容が確認できます。

安定性が高い理由

このように「フッ素系ポリマーを使用したイオン交換膜」が高い安定性をしめすのは、その構造に由来しており、

C-F結合(炭素-フッ素結合)をいう強固な結合をもつ「パーフルオロポリマー構造」をもっている

ということが高い安定性につながっているようですね。

管理人KON

一般論としては「フッ素系イオン交換膜はきわめて安定している」ということが伺えます。

フッ素化合物が漏出する条件とは?

ただし、特定の極端な条件下では、フッ素化合物が発生する可能性も指摘されています。

こちらの資料(>>ナフィオン膜の熱劣化メカニズムの解明)では、

  • 130℃以上の高温環境で、フッ素化合物(SOF₂)が検出された
  • 250℃以上では、膜の分解が顕著に進行する

といったデータが示されています。

さらに、高温に加えて高圧がかかる環境 では膜へのストレスが増し、分解のリスクが高まる可能性も指摘されています。

つまり、130℃以上の高温+高圧などの過酷な環境では、フッ素化合物の微量な放出が起こる可能性があるということが示されているのですね。

またこちらの資料(ナフィオン膜の安全データシート(SDS))によると、

(ナフィオン膜の)『過熱や燃焼によって生じる煙の吸入は避けるべき』

との記載があります。

この記載も、極端な高温(例えば燃焼レベル)で分解が進むと、有害なフッ素化合物が発生する可能性があることを示しているといえるでしょう。

水素吸入器の環境では安心?

では、水素吸入器におけるイオン交換膜の使用環境はどうなのか? を改めて確認してみましょう。

水素吸入器を正しく使用した場合、その運転環境は以下のようになります。

水素吸入器の運転環境:
  • 水素吸入器の運転温度 → 130℃もの高温には達しない
  • 水素吸入器の作動環境 → 高圧環境ではない
  • 純水を使用不純物によるダメージを膜が受ける可能性は少ない

このように水素吸入器の使用環境は「非常にやさしい環境」といえます。

極めて安定性の高い『ナフィオンをはじめとするフッ素系イオン交換膜』が水素吸入器運転中に分解し、フッ素化合物が漏出する可能性は極めて低いといえるのではないでしょうか。

YUIさん

たしかに、この運転環境なら危険はなさそうに思えるね。

一番確実なのは、実際に測定すること

とはいえ、やはり最も確実なのは、実際に測定を行うことです。

たとえば、市販の水素吸入器では「水素純度 99.995%」といったデータが公開されていますが、この【残りの0.005%未満】にフッ素化合物が含まれていないことを確認できれば、より安心して使用できるでしょう。

これまでのところ、ここまで詳細な測定を行っている水素吸入器は見たことがありませんが、今後メーカー側が測定結果を示すことで、「安全だろう」ではなく、確実に「安全だ」と納得して吸入できるようになると理想的ですね。

「工業用」イオン交換膜とは何か?

では次に、

  • 「工業用」イオン交換膜というのは何なのか
  • イオン交換膜に「工業用」「医療用」といった区別は存在するのか

という点についてみてみましょう。

「工業用」や「非工業用」といった明確な区別は存在しない

まず、大前提として知っておきたいのは、

イオン交換膜の種類として、工業用・医療用・家庭用といった明確な区別があるわけではない

ということです。

そのため同じようなものが、工業用に使用されたり、水素吸入器に使用されたり、という現状があるようです。

過酷な環境を想定した「工業用途」で開発されてきたからこそ安心できる?

ただしフッ素系イオン交換膜についていうと、もともと工業用途、つまり「高温」「高圧」「強酸性」などの過酷な環境で安定して性能を発揮することを目的に改良されてきた歴史があります。

参考:イオン交換膜の進歩|https://sce-net.jp/main/wp-content/uploads/2018/08/2015VT523c04.pdf?utm_source=chatgpt.com

ですから、仮に「工業用途で使用される工業用イオン交換膜」というものがあるとしても、
「だから危険」「だからもろく、フッ素化合物が漏出しやすい」というよりは、逆に、むしろそういった過酷な環境でも耐えられるように作られているとも考えられます。

この前提を押さえておけば、

水素吸入器のようなやさしい環境で使う場合は、過剰に不安になる必要はない

と、安心材料にさえなるのではないでしょうか。

自称?「工業用」イオン交換膜は存在する

ちなみにですが、PEM式で標準となっているイオン交換膜「Nafion」を開発したデュポン社では、「うちの膜は工業用です」と言っているそうです。

管理人KON

ある水素吸入器メーカーさんがデュポン社に問い合わせたところ、このような返事だったそうです。

たしかにデュポン社の公式声明に以下のようなものがあります。

>>DuPont Medical Caution Statement(「デュポン社の医療上の注意声明」)
https://www.fluoroprecision.co.uk/pdf/medical-statement.pdf

この中に、

「デュポン社の製品は、生命維持装置体内埋め込み機器など、医療用途を目的に設計・製造したものではありません」

「医療用途で使用して事故や損害が生じても、デュポン社は責任を負いません」

と記載されています。

つまり、デュポン社としては、「うちはあくまで工業用として提供しているので、医療用として使う場合は自己責任でお願いします」というスタンスなんですね。

デュポン社がこうした声明を出した背景

YUIさん

医療用途は想定してないって、水素吸入器に使って大丈夫なの?

・・と心配になるかもしれませんが、デュポン社がこのような声明を出した背景を考える必要があると思います。

デュポン社がわざわざこのような声明を出しているのは、おそらくですが、デュポン社が以前「テフロンの製造」にまつわる公害訴訟で6億7,000万ドルもの賠償金を支払うことになったという苦い経験があるからかもしれません。

>>デュポン/ケマーズ PFOA 訴訟 6億7,000万ドルで和解 一件落着して世界の規制当局は PFOA 制限を検討

DuPont, Chemours settle PFOA lawsuit for $670m. Case closure comes as global regulators consider PFOA restrictions (Chemical Watch 16 February 2017)

この苦い経験があるからこそ、「人体に直接かかわる分野には関わらない、あくまでも工業用製品です」というスタンスを明確にしているのではないでしょうか。

管理人KON

「工業用だから危険」という単純な話ではなく、「メーカーの事情」という側面もありそうです。

「工業用ではなく、水素吸入器OKです」というイオン交換膜も「フッ素系」

また、さらに興味深いこんな話もあります。

ある水素吸入器メーカーさんが、デュポン社製ではない、『水素吸入器に使って問題ありません』というお墨付きを出しているイオン交換膜を見つけたそうなのですが、

このイオン交換膜も「フッ素系」

とのこと。

YUIさん

同じ「フッ素系」のイオン交換膜なんだね・・!

このことからも、「フッ素系イオン交換膜は工業用だから危険」という単純な話ではないことがよくわかります。

イオン交換膜そのものに「工業用」という明確な区分がないため、メーカー側がどのように自社製品を取り扱うかに左右される部分が大きいのではないでしょうか。

こういった背景を知ると、『工業用だから危険』『フッ素系だから危険』といったイメージだけで判断せず、実態を知り、自分で納得して選ぶことが大切だと思えてきます。

フッ素系イオン交換膜とPFASの問題との関係は?

ところで、最近では『PFAS(有機フッ素化合物)』への関心が高まっていますよね。

特に水道水などへの汚染が問題視されており、「PEM式水素吸入器に使われているフッ素系イオン交換膜は大丈夫?」 という疑問を持つ人もいるかもしれません。

そこで、PFASの問題とフッ素系イオン交換膜(Nafion含む)の関係についても整理してみましょう。

Nafionは「広い意味ではPFAS」

まず、PEM膜の代表的な素材であるNafionはフッ素化合物であり、広い意味ではPFASに分類されます。

Nafion … 広義のPFASには含まれる。

日経クロステック

ただ、日本の規制対象となっているのはPFAS全体ではなく、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)など特定の物質に限られています。

Nafionはこれらの規制対象には含まれていないため、日本国内では現在のところ使用制限はありません。

PFAS全体を規制する動き

一方、ヨーロッパではPFAS全体の使用を制限しようとする動きが強まっています。

そのため、将来的にはNafionを含むPEM用の「フッ素系イオン交換膜」も規制の対象となる可能性がゼロではありません。

では、規制されるかもしれない「Nafion」を使用した水素吸入器での吸入は危険なのでしょうか?

ここでのポイントは、こうしたPFAS規制は(Nafionなど)フッ素系イオン交換膜の使用そのものが危険視されているわけではなく、

これらの物質があまりにも安定しているため、製造や廃棄のプロセスで環境のなかに放出された際に、分解されず蓄積される可能性がある

という点が問題視されているということです。

PFASは、環境中で永続的であり、それらの放出が最小限に抑えられない場合、人、植物、動物は益々ばく露され、その濃度は人の健康と環境に悪影響を与えるレベルに達するとしている。

欧州における永遠の化学物質「PFAS」の規制案

つまり、フッ素系イオン交換膜の『優れた安定性』が裏目に出ているのですね。

今後のPFAS規制には注目

今後、Nafionを含むフッ素系イオン交換膜の扱いがどのようになっていくかについては注視していく必要があるでしょう。

特にヨーロッパではPFAS全体を規制しようとする動きが強まっているため、将来的にPEM式水素吸入器に使われるイオン交換膜にも変化が生じる可能性があります。

ただ、現在議論が進められているPFAS規制は、主に「製造・廃棄時の環境影響」に関するものであり、水素吸入器の使用中にフッ素化合物が漏れ出すといったリスクとは関係ない話だということは押さえておきたいと思います。

まとめ

以上、今回は 「PEM式水素吸入器に使用されているフッ素系イオン交換膜は本当に危険なのか?」 という疑問について、さまざまな角度から見てきました。

内容をまとめると、

  • 現在多く使用されている「PEM式」の水素吸入器では、ほぼ「フッ素系イオン交換膜」が使われている
     
  • フッ素系イオン交換膜(Nafionなど)は極めて安定性が高く、「低温・低圧・純水使用」という水素吸入器の使用環境ではフッ素化合物が漏出するリスクは極めて低いと考えられる
     
  • イオン交換膜に「工業用」という明確な区分はなく、「水素吸入器に使用OK」(非工業用)とされるイオン交換膜にもフッ素系ポリマーが使われている
     
  • PFAS規制は「製造・廃棄時に環境中に放出されることへの影響」を懸念したものであり、水素吸入器の使用中にフッ素化合物が漏れ出すリスクとは関係ない

といった内容でした。

以上の内容から、『フッ素系イオン交換膜を使ったPEM式の水素吸入器の安全性について、過度に不安をもつ必要はない』というのが、この記事での結論です。

そして最も確実なのは、実際に測定を行うこと です。

今後、PEM式水素吸入器のメーカー側がフッ素化合物の有無をデータとして示すようになれば、より『確実な安心感』をもって水素吸入を行えるようになるのではないかと思います。

私も今回の記事作成を通じて多くのことを学びましたが、もし誤りや補足が必要な点があれば、ぜひ教えていただきたいと思っています。

この記事が水素吸入器を検討されている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

この記事を書いた人
スイスピ管理人 KON( 一般財団法人日本分子状水素普及促進協会個人会員/一般社団法人水素健康推進協会認定 水素健康インストラクター )
子供のころから敏感体質・虚弱体質に苦しんできたのですが、水素と出会ったのをきっかけにして体質がかわり、毎日をフルに活動できるようになりました。
そこから水素の医学研究や様々な製品にも興味を持つようになり、一般社団法人水素健康推進協会認定講師『水素健康インストラクター』の資格をとるまでになってしまいました。
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