水素水の知名度が増すにつれて、「水素水に効果があるなんて話は嘘だ!インチキだ!」という声もよく聞かれるようになってきました。
ただそうした水素水にたいする批判を見ていると、けっこう話が混乱していて有益な議論につながっていない点が多く見受けられました。
ここではその混乱している部分をはっきりさせて、水素水についての議論がわかりやすくなるよう、問題点を整理しなおしてみようと思います。
「水素水の効果は嘘か本当か?」という議論を混乱させている4つの要因
議論を混乱させている大きな要因は4つあげられます。
- 水素水の定義について間違った認識がされている
- そもそも水素水ではないものが水素水として販売されている
- 伝言ゲームのように、水素水についての間違った内容が伝わってしまっている
- 水素水研究そのものについて間違った認識がされている
それではひとつずつ見ていってみましょう。
1.水素水の定義について間違った認識がされている
まず、「水素水なんてものは科学的に存在しない」という批判として次のようなものがあります。
- 水素は水に溶けないから水素水なんてそもそも存在しない
- 水素は水です。水H2Oの「H2」の部分です。なので「水素水」なんてそもそも意味がない概念です。
これはどちらも誤った認識で、
☓:水素は水に溶けないから水素水なんて存在しない
→◯:水素分子は水に溶けにくくはあるが、常温1気圧下での飽和濃度約1.6ppmで溶かすことはできる。
☓:水素は水です。水H2Oの「H2」の部分です。なので水素水なんて意味がない。
→◯:酸素と結合して水として存在しているH2と、水素分子としてのH2はまったく性質が異なります。そして水素水とは水素分子(H2)を水(H2O)のなかに溶け込ませたものです。
ということになります。
水素水は「特殊な水」というわけではない
また、水素水のイメージとして「水素水という特殊な水」=インチキっぽい、という認識を持っている方もいると思います。
おそらく「波動を転写した波動水」のような、そういうイメージなんでしょうね。
これも実は誤ったイメージで、水素水は「水素水という水がすごい」わけではないことを押さえておく必要があります。
水はあくまで「水素分子を体内に届けるための媒体」であり、水そのものはただの水にすぎません。
「砂糖水は水が甘くなったわけではなく、水に溶け込んだ砂糖が甘い」というのと同じで、「水素水」という水に効果があるのではなく、水に溶け込んだ水素分子がもつ体内での働きが期待されているということです。
ですので「波動水」が科学的に観測できないのにたいし、水素水は「溶存水素濃度」をしっかり計測することができます。「信じるものは救われる」といった類の、何の計測にもひっかからないものではないんですね。
「水素水」というなんらかの「水」が存在するわけではない(砂糖水といっしょ)
水素水とは「水素分子(H2)を溶けこませた水のこと」であり、「水素分子を体内に届けるための媒体として水を利用したもの」
まずはこの定義をはっきりさせておきたいと思います。
「水素水」=「アルカリイオン水」ではない
これも多くの情報で誤った認識がされていますが、「水素水」=「アルカリイオン水」というわけではありません。
アルカリイオン水とは水を電気分解したときに陰極側に生成する、水酸化物イオンを含んだ弱アルカリ性の水のことをいいます。
この反応の際に水素も発生するため「電解水素水」と呼ばれたりもしますが、その濃度は0.3ppm程度で決して高いとはいえません。
(参考:アルカリイオン水 wikipedia)
それにたいして「水素水」は単純に水素分子を溶けこませた水のことなので、必ずしもアルカリ性ではありませんし、1.6ppmの高濃度水素水もあります。
水素水の主流を占める「アルミパウチ水素水」はほぼすべてが「水に水素分子を充てんする」という製法のため中性ですし、
多くの「水素水サーバー」もpHが極端に傾かないような工夫をしながら、中性で1.0ppm前後の高濃度の水素水を生成できるようになっています。
かつて「アルカリイオン水製造機」として販売していた機器を「水素水製造機」として販売しているメーカーもあるようですが、水素水の質としては水素濃度も低く、水素水サーバーとしてはかなりよくない部類に入ります。
『水素水と大きなカテゴリーの一部には、水素を多少含んだアルカリイオン水も含まれる』というのが正しい認識になります。
「活性水素水」も水素水ではない
これも非常によく混同されているようですが、「活性水素水」と呼ばれているものは水素水とはまったく関係がありません。
水素水は「水素分子(H2)」を水に溶け込ませたものであり、活性水素水は「原子状水素(H)」を溶けこませているとされているものです。
H2OとH2がまったく性質が異なるのと同様、H2分子とHもまったく性質が異なります。
そしてこれまで世界で400報もの研究論文と20例の臨床研究がすすめられてきているのは「H2分子をとけこませた水素水」についてです。
水素水批判の中には「水素水」と「活性水素水」をいっしょくたにしてしまっているものがあり、このことも話を非常にわかりにくくしてしまっています。
たとえば5月14日にyahooニュースに掲載された産経新聞の記事では、明治大学情報コミュニケーション学部の石川教授のサイトを引き合いに出して、
水素水(活性水素水、電解還元水)に一般に言われるような美容や健康への効果があるかを評定。『疑似科学である』と結論付け、運営するサイト「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」に1月、公表した。
とあります。
この記事に関しては水素水の医学研究の第一人者である日本医科大学の太田成男教授も間違いを指摘されていて、ご自身のブログで次のように書かれています。
しかし、石川教授のサイトでは、活性水素水(電解還元水)のみを対象としており、水素水を一切対象にしていない。さらに、質問コーナーでは下記のように活性水素水と水素水が別物である事を明記している。
>> 「話題の「水素水」 かつてブームを巻き起こした「あの水」と同じだった…」という記事に対しては、「水素水」および「活性水素水」については情報が混同しあっており、不明瞭な部分が多々あります。ただ、現在は「水素水」と「活性水素水」は”別物”と考えるのが妥当かと……。」
「『水素水』と『活性水素水』は全く別物ですね。評定内で混同させるような記述はなかったと思いますが、「明確に」ということをもう少し強調する必要があるかもしれません。」<<
つまり引き合いに出した石川教授本人は「水素水」と「活性水素水」をわけて考えた上で「活性水素は疑似科学である」としているにもかかわらず、
記事を書く側が「水素水(活性水素水、電解還元水)」と書いてしまい混同してしまっているわけですね。
石川教授は「水素水が疑似科学である」と主張しているわけではないにも関わらず。
「HもH2も性質はいっしょでしょ?」というイメージからこのような論になってしまったのかもしれませんが、誤った前提に基づいているため、この記事は訂正が必要です。
2.そもそも水素水ではないものが水素水として販売されている
水素水は「水素分子H2を溶けこませた水」のことであり、「水素分子を体内に届けるための媒体として水を利用しているもの」というのが水素水の定義といえるわけですが、
「水素水」として販売されているもののなかには残念ながら水素水とは呼べないものもあるようです。
これは2013年の少し古い週刊文春の記事ですが、「水素水として販売されている製品」の実際の水素濃度を計測したものです。
ご覧いただくとわかるとおり、宇宙一小さい水素分子はペットボトルだとすり抜けて出ていってしまうため、ペットボトル2製品とも「水素濃度:0ppm」になってしまっています。
たしかにこの製品だけ見れば「水素水はインチキだ!」といえるわけですね。
ここで混乱してほしくない点は、「水素水がインチキだ」ということと「水素水を騙ったこの製品がインチキだ」というのは別の話だということです。
「水素水を騙った製品がある」=「すべての水素水製品がインチキだ」というのは明らかにおかしな論理展開ですよね。
「結婚詐欺をする輩がいる=結婚はすべて偽装でインチキだ」というのと同じ論理展開です。
「水素水を騙ったインチキ製品がある」ことと、「水素水に効果があるのかどうか?」という議論はまったく別の話ですので、この点もはっきりさせておきたいと思います。
3.伝言ゲームのように、水素水についての間違った内容が拡散してしまっている
インターネット上の情報というのは広く伝われば伝わるほど、伝言ゲームのように少しずつ間違った内容で伝わっていってしまうことがあります。
ネット上では自分が触れた情報にたいして「ウラをとる」といったわずらわしいことはしない人がほとんどなので、
「思い込み」の上に「思い込み」が重なって、どんどん間違った情報が拡散されていってしまう可能性があるんですよね。
特に今回の水素水批判のようなある種「炎上」ともいえるような状況であれば、なおさらその傾向は強まっていると感じます。
「活性水素水」「水素水」など、体にとても良いと話題になっていますが……。マイナスイオンによる抗酸化作用などがうたわれているようですが、本当に効果があるのでしょうか。
出典:【悲報】ちまたで話題の水素水…「効果なし」と専門家らの声(NAVERまとめ)
この文章などはその最たる例です。
先ほど触れた「活性水素水」と「水素水」の区別ができていませんし、「マイナスイオンによる抗酸化作用」などといったことはどの水素水研究でもまったく触れられていません。
おそらく伝言ゲームのように、どこかの誰かが「マイナスイオン」の話を絡ませて語ったのがごっちゃになってしまっているのではないでしょうか。
この記事は「水素水 効果なし」でかなり上位に表示されるので目にされることも多い記事にも関わらず、このように話の前提からしてぐちゃぐちゃになってしまっています。
このような記事が多くの人の目に触れる状況であれば、水素水についての議論が混乱するのは当然だと思います。
4.水素水研究そのものについて間違った認識がされている
最近の研究で明らかになってきた水素の働きについてまったく知らないまま、「昔のイメージ」や「思い込み」にもとづいた誤った認識のもとにされている批判もみかけます。
先ほど触れた5月14日にYahooニュースに掲載された産経新聞の記事にたいする反論として、太田教授は次のように書かれています。
(産経新聞の記事では東京大の唐木英明名誉教授のコメントとして)
「『高濃度の水素といっているが、それでも水素濃度が低過ぎる。飲んだ水素は胃の中で消えてしまうだろう。
仮に、水素が血流に乗って体の組織に到達したとして、それがどのような作用を発揮して疾病治療につながるかの説明がない』とし、『水素には何かの効果があるかもしれない。しかし、市販の水素水に効果があるかと言われれば、ゼロだろう』と手厳しい。」というコメントを掲載している。「濃度が低すぎる」というのは何をもって低すぎると言っているのか根拠がなく、「どのような作用かの説明がない」というのは、そのコメントした方が知らないだけだと推察する。もし、知っていたらこのようなコメントはでないはずだ。
なお、多くの臨床研究では市販品の水素水や水素発生装置が使用されており、有意な結果をだしており、「市販の水素水に効果があるかと言われれば、ゼロだろう」というコメントは明らかに間違いである。
ここで指摘されている唐木教授のように、実際の研究内容を把握せず印象や思い込みだけで断罪しているケースがよく見られます。
説明ができないから効果はない?
実は水素分子が生体内でおよぼす働きのメカニズムについては、そのすべてが解明されているわけではありません。
一般には「活性酸素を取り除く抗酸化の働き」で説明されることが多いですが、抗酸化のメカニズムだけでは説明しきれないほど「良い効果がある」のだそうです。
水素(H2)が人の細胞内で様々な効果を発揮することは、私にとっても「too good!」で良すぎるがための長年の悩みの種でした。
水素が酸化力の強いフリーラジカルを除去するだけでは、説明が出来ないことがたくさんあることがわかってきたからです。
(出典:太田成男のちょっと一言)
最近では水素分子が遺伝子の発現機構を調節することから「too good」な働きをすることがわかってきたそうですが、このようにまだまだ研究途上なのは事実です。
研究途上であるがゆえに国にも認められておらず、メーカーも「効果がある」とはいえません。(効果があるといってしまうと法律違反になります。)
そのことから「疑似科学だ」とすべてを否定する人もいるようですが、それではいつまでたっても科学は進歩しないことになってしまいます。
「期待をもって、さらなる研究の進展を見守る」というのが今の私たちの態度としては適切なのではないかと思います。
まとめ
以上、今の水素水についての議論を混乱させていると思われる4つの要因について見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
日本医科大学の太田教授は
私としては、水素を医薬品として承認され、水素水を機能性食品に指定されるようにと努力しています。
と、公にその効果が認められるように研究を続けられているようですが、現状では公に「効果あり」とうたうことは禁じられています。
ただ、「数多く出されている水素についての研究論文の内容」「多くの水素水飲用者の口コミ」「実際に自分でも試してきた実感」からすると、「水素水を飲む価値はある」と感じています。
水素分子・水素水には人の健康レベルを多いに高めてくれる可能性があると思うので、
さらに研究が進展して誰もが納得できるような状況になっていくことを願っています。
Image courtesy of David Castillo Dominici at FreeDigitalPhotos.net