「水素は水に溶けない。だから水素水には信ぴょう性がない」
という話をされる方がいます。
今回は、
- 水素は水に溶けるの?
- 溶けるとしても十分な効果が得られるほどの量なの?
といったあたりについて確認してみましょう。
水素は水に溶ける
まず、水素分子はけっして水に溶けないということはありません。
「21度、1気圧下」という条件であれば、重さで最大「1.6ppm」という濃度(1ppmは100万分の1)で水に溶け込ませることができます。
具体的にいうと、1リットルの水に1.6mgの水素分子を溶け込ませることができるということですね。
高温でもわりと溶ける
また、よく「高温になると水素はぜんぶ抜けてしまう」といわれていますが、実際には80℃くらいでも半分くらいは溶け残っています。
ちなみにスターバックスのコーヒーの温度は72℃らしいので、がんがん沸騰させなければ温かいコーヒーやお茶も十分「水素入り飲料」として飲めることになります。
なぜ「水素は水に溶けない」と思われているのか?
ところでなぜ「水素水は水に溶けない」というイメージが強くひろまっているのでしょうか?
このイメージは、おそらく中学校で習った実験の記憶による部分が大きいのではないかと思います。
中学校でやる「水素をつくって調べる実験」
中学1年生でやる「気体」の授業のなかで、「水素をつくってその性質を調べる」という実験があります。
水素をつくる方法として、
- 電気分解
- マグネシウムや塩酸を使った方法
などがとられますが、いずれの方法でも「水上置換法」という方法で水素を集めます。
水上置換法とは「水に溶けにくい気体」を集める方法で、まず水中に気体を発生させ、水に溶けずに浮上してきた気体をさかさまにしたビーカーや試験管のなかに集めます。
「水上置換で集められる」=水に溶けない?
この「水上置換法で集めることができる」ということから、「水素は水に溶けない」というイメージがついてしまっているのではないでしょうか?
でも実際には、
水上置換(すいじょうちかん)とは、気体の捕集法の1つである。主に水に溶けにくい気体の捕集に用いられる。
(出典:wikipedia)
このように「水に溶けにくい気体」の捕集法であって、かならずしも「まったく水に溶けない気体」である必要はないんですね。
たとえば酸素も水上置換法で集めることができますが、海の魚は水に溶け込んだ酸素のおかげで生きています。
「水素は水に溶けない」というイメージは、中学時代の記憶から生まれた、ちょっとした勘違いなのかもしれません。
水素がちょっとだけ溶けたとしても、少量すぎて意味がない?
「水素水に溶けている1.6ppm程度の水素では少なすぎて効果なんてない。」
「水素ガス吸入は効果があるかもしれないけど、水素水は水素分子の量が少ないので飲んでも意味がない」
水素は水に溶けることがわかっても、このような疑問をもたれている方もいるかもしれません。
この疑問には4つの角度から回答することができます。
1.水に溶ける「水素分子の数」は酸素の約2/3。そんなに少なくもない。
まず「そもそもそんなに少なくない」という話からいきましょう。
水素分子が水に溶け込ませられる濃度は「重さ」で1.6ppmです。(1ppm=100万分の1)
この数字だけみるとかなり少ないように見えますが、水素は宇宙一軽い分子のため分子の数でみるとそんなに少なくありません。
たとえば水に溶け込ませられる「酸素分子」の数とくらべると、約3分の2なんですね。
何らかの作用をもつのに十分な分子数
海の水には酸素が溶け込んでいるおかげで魚は体内に酸素を取り込むことができます。
海水中の酸素が「魚を生かす」という決定的な作用をもっているわけで、これと比較すると「水に溶け込んだ水素分子が作用をもつ」ことは不思議なことではないとわかります。
2.水素分子が微量でも効果をもつメカニズムが解明されつつある
また、水素分子が微量でも体内で影響力をもつメカニズムについても明らかになってきています。
そのひとつが「遺伝子にはたらきかけて、さまざまなホルモンの分泌量に影響を与える」という作用です。
ホルモンは微量でもさまざまな影響を身体のなかにもたらすことができますが、そのスイッチを押すはたらきが水素分子にあることがわかってきています。
脳神経を守るグレリンや、代謝を活性化するFGF21
たとえば水素水を飲むと、胃からグレリンというホルモンが放出され、脳神経を守ったり副交感神経を優位にするという効果がもたらされます。
また肝臓からはFGF21というエネルギー代謝を活発化するホルモンが分泌されるようになることもわかっています。
このようにホルモンの分泌を調整する働きにより、水素分子がたとえ微量だとしても体内で大きな影響をもたらす可能性があります。
3.水素ガスと比較しても、臓器まで届く水素分子の量に大きな差はない?
一般的なイメージとして、「直接水素ガスを吸入するほうが、水素を水に溶かして飲むよりたくさんの水素分子を取り入れられる」というのがあると思います。
私自身もそういうイメージをもっていましたが、太田成男教授の著書『続・水素水とサビない身体』には次のように書かれていました。
結論から言うと、水素ガスを吸わせた時と、水素水を飲んだ時では、臓器へ達する水素濃度はあまり違わないのです。
(中略)
(有効濃度とされている)1.3%〜3%の水素ガスを吸入した時の水素の体内濃度は、10μM〜24μMになるはずです。別の単位で表すと0.02ppm〜0.048ppmです。
では水素水を飲んだ時の体内濃度はどうなるでしょう?
(中略)
測定結果では、水素濃度は肝臓で20μMに達することが実測されています。別の単位で表すと0.04ppmです。
この濃度は、3%の水素ガスを吸わせた時の水素濃度とほぼ一致します。
(中略)
もちろん、水素ガスの吸入と水素水の飲用による体内動態は全く同じだというわけではありません。しかし、基本的には同じように考えてよいのではないかと思っています。
(出典:『続・水素水とサビない身体』
というわけで、「臓器に届く水素分子」に限って言えば、水素吸入と大差がないという見方もできるようです。
正直、太田教授の述べられている理論的な部分は難しくてよくわからないのですが・・
4.「腸内細菌が発する水素量」より少なくても意味がある
人の腸内細菌のなかには水素を発生させるものがあるため、
「腸内細菌から発生する水素の量のほうが多いので、水素水を飲んでも意味がないのでは?」という話もあります。
たしかに飲まなくても体内で発生しているのだとしたら意味がないようにも思えますが、実際はどうなのでしょうか?
この「腸内細菌が発する水素」については研究者の方も注目はされていたようで、いくつかの研究で明らかになっていることがあります。
1.腸内細菌からの水素は全身には作用しない
まず腸内最近由来の水素は全身にまでは作用しません。
たとえばさきほどの「グレリンの分泌」にもほぼ影響しませんので、この1点だけみても水素水を飲む意味はあることになります。
2.体内の水素量よりも、水素量の変化が大事
名古屋大学による「ラットのパーキンソン病を改善する水素の効果」を調べた研究によると、パーキンソン病の改善効果をえるためには、
体内全体の水素量よりも、水素濃度の変化のほうが大切
と結論づけられています。
つまりもともと腸内細菌が水素を発していたとしても、そこに水素水を飲むことによる「体内の水素濃度の変化」が起きることで、効果がもたらされるということがあるようです。
まとめ
以上、今回の内容をまとめてみると、
- 水素は「十分な濃度」水に溶ける
- 微量の水素でも、身体に取り込むことで効果をもたらすメカニズムが解明されつつある
ということになります。
もちろんこの話と、「すべての水素水商品に十分な水素が入っているか?」というのは別の話です。
なかにはほとんど水素がはいっていない悪質な製品もでまわっているようなので、水素水製品を選ぶときには注意して「信頼のおける製品」を選ぶ必要があるのは間違いありません。